駐輪場のおっさん
僕の住む家は最寄りの駅から少し離れている
なので出かける時は自転車を使うことが多い
その自転車を止める駐輪場には必ず青いジャンパーを着たおっさんたちがいる
仕事の現役を退き、第二の仕事をのんびりやっている人達だろう
彼らの仕事は簡単に言えば、自転車の整理
公共の場に秩序を生み出してくれる存在である
一回駐輪するごとに100円がかかるのだが
自転車の前輪を奥まで押し込まないとロックがかからず、料金が発生しない仕組みなので、中にはやんわりと自転車を台に乗せ、たかが100円をちょろまかそうとする不心得者がいたりする
青ジャンパーのおっさんたちはそういう輩を一網打尽にすべく、
誰かが自転車を止めるなり、そばに歩み寄り、しっかりロックがかかっているかを確かめに来るのである
はじめの頃はそんなおっさんたちを疎ましく感じていた
おいおい、そんなせこいことしないわ、と
でも、そのおっさんたちはロックを確認した後
必ず目を見て「行ってらっしゃい」と力強く言ってくれるのだ
その行ってらっしゃいには
「きみの自転車はワシがしっかり守るからな!」
というアツい気持ちが込められている
その行ってらっしゃいを受けて、僕も自然とその自転車を置いた後に待っている予定に対して気合が入るのだ
まるで戦地に赴く兵士のごとし
愛した女(自転車)を信頼できる仲間(おっさん)に預け、1人戦地(飲み会)へと旅立っていく
行ってらっしゃい!
お願いします!
そのやりとりの間には、男と男のアツい気持ちの混じり合いがあるのだ
自転車を預けた後、溢れる涙をこらえながら
僕はきょうも酒を飲みにいくのである
そんな今日は成人式
どうか若人たちよ、あの駐輪場の青いジャンパーを着たおっさんのようなアツい魂を持った大人になってほしい
未来は明るいぞ